児童の保護者から「児童がいじめの被害に遭っている」との申告がありましたが、その児童が掃除をサボったところ他の児童から注意を受けたことを「いじめ」と捉えて苦情を言っているようでした。このように加害者には非がないような場合には、どのように対応したらいいでしょうか。

いじめ防止対策推進法に基づき、「いじめ」の事実の調査を行う必要があります。事実の調査の結果、いじめの事実が確認できた場合には、加害者に対する指導、被害者に対する支援等を行う必要がありますが、加害者に非がないような事案では、被害者に対する支援のみを行えばよいでしょう。

補足説明

いじめ防止対策推進法2条1項の定める「いじめ」の範囲は非常に広範であり、少なくとも学校内において児童生徒間の行為で一方の児童生徒が苦痛を感じた場合には、すべて法律上の「いじめ」に該当することとなります。また、法23条2項は、いじめの疑いがある場合には、学校に対し、いじめの事実の調査義務を課しているところです。そうすると、被害者やその保護者から「心身の苦痛を感じている」「いじめに遭っている」といった申告があったような場合には、学校は「いじめの疑い」があるとして事実の調査を行わなければならないということになります。学校として、事実の調査も行わず加害者に非がないと結論を先取りすることは避けなければなりません。

さらに、法23条3項は、事実の調査の結果、いじめがあったことが確認された場合には、学校に対し、加害者に対する指導、被害者に対する支援等を行う義務を課しているところです。先に述べたとおり、法律上のいじめの範囲は広範であり、大抵の事案ではいじめの存在が認定されることになりますし、法23条3項は加害者(条文上は「いじめを行った児童等)に非があるか否かを問題にしていませんので、仮に事実の調査の結果、加害者には全く非がないという結論に至ったとしても、一応のところ条文上は、加害者に対する指導をしなければならないことになります。

しかし、ご質問のように、児童が掃除をサボったところ、他の児童から注意を受けたというような場合、注意をした児童が極端に強い口調で非難したといったような事情がない限り、加害者には非がないと評価することができます。そのような場合に加害者に対し、無理矢理に指導すべき点を見つけ出し、例えば「掃除を注意するのは良いが言い方やタイミングが良くない」といったような形で指導をすることは、教員が加害者に因縁をつけるに等しく加害者の自由を極端に抑圧するものであり避けるべきです。

法23条3項については、典型的な場合について記載したものであり加害者に非がない場合には、法律上のいじめが認定できたとしても加害者には指導を行わないという対応をすべきでしょう。加害者に対する指導は行わず、被害者に対する支援、今後、加害者との円滑な関係を築ける方法を一緒に考えることなどを行うことは、同項の要請でもありますので、これについては学校として確実に履践する必要があるでしょう。

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