概要

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「給特法」という。)は、公立学校の教員の給与等について他の公務員とは異なる特別な規律を行うことで、教員の職務と勤務態様の特殊性に対応することを趣旨(1条)とする法律です。教員の職務と勤務態様には、職務が無定型であること、成果の測定や労働時間の管理が困難であることなどに、他の公務員とは異なる特殊性があり、こうした特殊性に対応するために公立学校の教員の給与等について1971年(昭和46年)に特別の立法がされました。

給特法の内容

適用対象

給特法の適用対象は、公立の義務教育諸学校等の教育職員です。給特法は「義務教育諸学校等」を学校教育法に規定する公立の「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は幼稚園」と定義しており(2条1項)、「教育職員」を義務教育諸学校等の「校長(園長を含む。)、副校長(副園長を含む。)、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師、実習助手及び寄宿舎指導員」と定義しいます(2条2項)。公立の幼稚園から高校までの管理職を含めた全教員が適用対象であると理解して良いでしょう。

教職調整額と労働基準法37条の適用除外

公立の義務教育諸学校等の教員には、給与月額の100分の4(4パーセント)に相当する額を基準とする教職調整額が支払われます(3条1項)。これは、給特法の立法された1971年(昭和46年)当時の教員の超過勤務時間が平均して週に1時間48分であり、超過勤務手当に相当する金額が給与月額の4パーセントに相当したことを根拠としています。

その反面、公立の義務教育諸学校等の教職員には、読み替えられた地方公務員法58条3項により、労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金、いわゆる残業代の規定)が適用されない結果、法定労働時間外に業務を行ったとしても、これに対する残業代を請求することができません(給特法5条)。現在の教員の超過勤務時間が法定労働時間の4パーセントを超えているとすれば、給特法を制定した当時の教職調整額の設定は前提が異なることになります。

超過勤務を命じることができる場合

管理職以外の公立の義務教育諸学校等の教員に対して、正規の勤務時間を超えて勤務(超過勤務)を命じることができるのは、政令に定める場合に限られています(6条)。この政令に定める場合は、後に述べる4つの場合であることから、一般に「超勤4項目」と称されています。

政令では、そもそも教員について、正規の勤務時間の割り振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとする(公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令1号)とした上で、教員に対して時間外勤務を命ずることができる場合として、①校外実習その他生徒の実習に関する業務、②修学旅行その他学校の行事に関する業務、③職員会議に関する業務、④非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務に従事する場合であって、臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る(2号)とされています。

すなわち、原則としては時間外勤務を命ずることはできず、例外として時間外勤務を命ずることができるのは、超勤4項目に該当し、かつ、臨時又は緊急のやむを得ない必要がある場合に限られているというのが、法の建付けです。